最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)889号 判決 1968年2月09日
上告人
常磐炭鉱株式会社
右代表者
青山栄
右訴訟代理人
毛受信雄
右訴訟復代理人
谷正男
被上告人
西武鉄道株式会社
右代表者
小島正治郎
右訴訟代理人
工藤精二
中島忠三郎
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人毛受信雄、同復代理人谷正男の上告理由第一ないし第四点について。
原審は、所論乙第一号証の一ないし二一一車扱貨物通知書の荷受人らんに「キャンプ所沢側入」なる記載はあるが、本件の運送契約における真実の荷受人はアメリカ合衆国駐留軍ではなく上告人であつた旨の事実を認定しているのであつて、右事実認定は、原判決挙示の証拠に照らして是認しえないではなく、その判断の過程に所論の違法を認めえない。論旨は、原判示を正解しないでこれを非難し、さらに原審の証拠の取捨判断および右事実認定の不当をいうものであつて、採用しえない。
同第五点について。
論旨は、本件運送契約における荷受人がアメリカ合衆国駐留軍である旨の被上告人の自白は、真実に反するものではなく、錯誤に基づいてなされたものでもないから、その撤回は許されないと主張するが、原審の認定した事実および一件記録に徴すれば、右の自白が真実に反しかつ錯誤に基づいてなされたもの認めたと原審の判断は是認しえないことはなく、論旨は採用しえない。
同第六点について。
原判決挙示の証拠に徴すれば、被上告人が本件留置料の支払を催告したのに対し、上告人が請求権の存否につき調査のため猶予を求めていた旨の原審の事実認定は是認しえないではなく、このような場合には、民法一五三条所定の六ケ月の期間は、上告人から何分の回答があるまで進行しないものであり、したがつて、回答がある前になされた本件訴の提起によつて、被上告人の請求権につき時効中断の効力を生じたものと解したものと解した原審の判断は正当である。論旨は、要するに右事実認定を非難するものであつて、採用しえない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)